初診で症状無くて心筋梗塞
今週あった印象的な出来事です。
初診の50歳男性。
糖尿病と高血圧の治療中で安定しており
この病院で治療を継続したいといらっしゃいました。
通院中の方の中では比較的元気な若い男性
糖尿病の検査をして今までと同じ薬を処方すればいいようですが
診察の原理原則を思い出し
「何か気になることやお困りの症状はありませんか」
と顔を正面から見ながら尋ねました。
「なーんか、2ヶ月前血圧の薬が変わってから、薬を飲んだ後
なんとなく胸が苦しいような感じがするんですよね。今朝もありました」
とおっしゃる。
血圧はやや高めですが脈の乱れや心臓の雑音はなさそうです。
「それでは、念のため胸のレントゲンと心電図は
とりましょう、心臓の超音波検査とかもした方がいいかも」
というと
「いやいや、今はなんともないし。先月健診で心電図とって異常なかったし」
とあまり乗り気ではないご本人を説得し
とにかくレントゲン、心電図をとりに行ってもらいました。
さて、心電図をみると
(あれ、この波の形 やばいかも、胸部誘導でST上昇??
でも以前の心電図がなくて比べられないのでわかりにくいな)
内心焦りながら
「気になるところがあるのでこれはもっと検査が必要です!」
と言い切って、血液検査と、心臓の超音波検査をオーダー
しばらくしてパソコン画面に一部検査結果が
トロポニンT陽性
ぎゃ!心筋梗塞!!
と慌て超音波検査室へ
心臓の動きが悪いところがあり
間違いなさそう
本人に、説明して
専門的な治療ができる総合病院に電話連絡。状態を説明し
まもなく受け入れOKの返事
「よかった!」
急いで今日の経過と検査結果を診療情報提供書に書き、
その間、看護師さんが家族の連絡先の確認と
再度バイタル(血圧など)チェック、
ルート確保(点滴の準備)
今のところまだ心機能が落ちて無くて
やはり症状はなくて血圧も保たれていますが
急に状態が変わる危険性があるので歩いて行ってもらうわけにはいきません。
救急車を呼んで搬送してもらうことに。
テキパキとした動きの救急隊員さん
救急車には看護師さんが一人、紹介状を持って乗車。
どうか無事検査と治療を受けて
戻って来ることをお祈りしています。
心筋梗塞は心臓に栄養を送る血管が詰まり
心臓を動かす心筋が壊死して
心機能が急に低下、命にも関わる病気です。
いきなりひどい胸痛で発症することが多いのですが
このように症状があまりなくて
場合によっては診断が遅れることも
実は糖尿病の患者さんには神経障害があることが多く
このように無症状な心筋梗塞も多いのです。
正直私は心疾患のことは詳しくありません。
あの時
真顔で症状を尋ねて良かった
無理にでも心電図勧めて良かった
基本を忘れなかったこととチームワーク!!に助けられました。