「私がいなければみんなが困る」と決めているのは自分自身
今日のある患者さんは相当に疲れていました。
70歳過ぎの女性。「私は嫁いで実家を出ている身なので本当は関係ないはずなのですが・・・」
と言いながら、何代も続いている実家の家業を引き受けています。頼まれた仕事は断れない。
そこには高齢で認知症気味で体が弱っている兄と姉がいてそのお世話もしています。
2人とも病院には行こうとしないので介護保険も利用できてていません。
お兄さんには離れたところに子供さんがいるそうですが、
実家の家業を継ぐ気はなくサラリーマンをしているとのこと。
おまけにご自身の夫も癌で闘病中。
ご本人は糖尿病のコントロールがめちゃくちゃ悪い。
そんなにストレスかかってたら血糖値が下がるわけがないのです。
闘争ホルモンであるアドレナリン、抗ストレスホルモンであるコルチゾールなどがたくさん分泌され、それらは血糖値をかなり上げます。おそらくいい睡眠もとれていないでしょう。
「疲れすぎて無意識に食べ物に手が伸びて、食べても満足しなくて食べ過ぎる」と仰ってました。
その状態では糖尿病薬も効果が発揮されず、血糖値が下がらないのでつい薬を増量すれば、
むしろ副作用の恐れもあります。
入院して治療してはとすすめはしましたが、やることがありすぎて到底無理と。
私はとにかく仕事を可能な限り断り、きょうだいは早急に介護保険などを利用して休める時には休むよう強く勧めました。
仕事をいろいろと引き受け「私がいなければ、みんなが困ります」とがんじがらめになっている人を時々見かけます。
自分が倒れるまでその状態が続くのでしょうか?
何か優先順位を間違っているように思えます。
実際に倒れて初めて一番大事な事に気付いた人も見てきました。場合によっては命を失います。
運命の定めのように考えておられる様ですが、結局は縛っているものはご自分なのでしょう。
その方とはいろいろお話しして食事や薬の説明もして帰宅していただきましたが、
仕事を減らして自分の治療に専念してくださるでしょうか。食事療法ができるでしょうか。
あとは祈るしかありません。