アルコール依存症
アルコール依存のXさん
今日来院の患者さんの中で印象深い方はアルコール依存のXさん、50歳代後半の男性。
長年かなり大量の飲酒が続きアルコール依存症になりました。精神科でもうつ病などの病名のもとたくさんの薬を出されています。
糖尿病でインスリン注射治療中ですが、きちんとできておらずコントロールはとても悪い。
肝臓は肝硬変の状態。
アルコールや糖尿病の神経障害によるしびれや筋力低下により歩行がほとんどできなくなっています。
意欲が乏しく少し認知機能も低下しているようです。
昨年近くのクリニックから私の勤務する病院に内科的治療のため紹介されました。血糖値が高過ぎるため一旦入院した後外来通院しています。ただ、こまめな自己管理はとてもできません。
アルコールを飲み過ぎると
アルコール類を多く飲む人は糖尿病になりやすいです。アルコールでの肝臓障害、膵臓へのダメージ、栄養障害などが影響しています。
アルコールは神経毒です。
急性アルコール中毒で意識障害が起こり、一気飲みなどで死に至ることもあることは知られていますね。そこまでいかないにしても酔って記憶がなくなることを経験している人は多いと思います。
慢性アルコール中毒では栄養障害特にビタミンB1の不足による脳の障害(ウエルニッケ脳症)があります。そして脳の萎縮により認知症になったり、小脳変性で歩行障害になったり、末梢神経障害で足のしびれがひどくなったり、筋肉の障害で筋肉が萎縮したり筋力低下で歩けなくなったりします。
Xさんの来院
そのような状態なので仕事はしてません。超高齢の母親に頼って生活しています。小さなお母さんがかなり大柄な息子が乗る車椅子を押して診察室に入ってきます。
正直このような方はお手上げ。
精神科でも毎回簡単な診察で同じ処方をしている様です。デイケアに行くことになっていますが、「行ってない」そうです。家で寝たりおきたりの生活。でも入院より家で生活したいそう。
今日の血糖値は400もありました。
前々回は600以上ありました。
飲酒はしていない、インスリンは注射しているとのことですが、わかりません。
肝機能は入院していたときより悪くなっています。
お母さんは高齢で食事はほとんど作れないためコンビニのお弁当やインスタント類が多くお菓子も結構食べている様です。前回はポテトチップスを毎日食べているとのことだったのやめるように話しました。でもどうしても食べるのは糖質や添加物の多い市販のお弁当や麺類など偏ります。
病院でそのような方に一体何ができるのか
毎回考えこみます(他にも同じような患者さんを数名担当しています)
命に関わるような事態になれば入院治療となりますが、日頃は月に1回何とか受診してもらい、検査して診察と説明をして薬の処方をする。
血糖値が高すぎて昏睡状態になるような事態は避ける
そのような普通の診療しかできません。
もどかしいばかりです。
アルコール依存症については
ならないための予防や早期治療がとても重要。
絶対に飲酒を人に強要することがあってはなりません。
Xさんのこれから
Xさんの様な状態になると、正直一般的に予後は厳しいです。
肝不全や感染症、消化管の出血などを起こしやすいからです。
できる治療を淡々とやるしかない
しかしながら
人間生きている限りは回復の可能性も絶対ないとは言えません
これまでの経過や今のご本人の思いについて、もう少し詳しく聞いてみよう
なにかの糸口があるのかも
とこれを書いて今思っています。