おじいさんと桜並木
私が働く病院のすぐそばに桜の並木道があります。毎年見事に花が咲いて歩く人や病院に入院している人の眼を和ませてくれます。今年も見事に咲いています。私もこの季節はこの歩道を歩くのが何より楽しみです。
今日受診の患者さんで80代半ばの男性。脳梗塞後遺症と認知症で歩けません。奥さんが車椅子を押して診察室に入ってきます。ほとんど表情も変わらず、声をかけてもしゃべることもない人です。
一通り診察した後に
奥さんが「先生 病院の近くの桜はうちのお父さんが中心となって植えたんですよ。町の人と協力して距離を測って、桜の苗木を市にもらいに行って、みんなで植えたんです。あの頃は若かったねー。子供も小学生でした」
と話すと急にその男性は声を上げて泣き出しました。
脳梗塞で起りやすい感情失禁と言われる状態ではありますが、3年くらい診察していて 診察室で声を上げることがほぼない方なので驚きました。
それほど桜は感情を動かすものなのですね。
たまたま私がその方を診察していて奥さんに話を聞いたので見事な桜がそこに植えられているわけがわかりました。
その方の若い頃の働きにより私たちが今桜の花を毎年楽しめる。
お陰様です。

